首都圏反原発連合:ステートメント 【原発事故処理水海洋廃棄日程の閣僚会議の決定を受けて】

Posted on by on 8月 23rd, 2023 | 首都圏反原発連合:ステートメント 【原発事故処理水海洋廃棄日程の閣僚会議の決定を受けて】 はコメントを受け付けていません

首都圏反原発連合:ステートメント【原発事故処理水海洋廃棄日程の閣僚会議の決定を受けて】
 
 東京電力福島第一原発事故の処理水(以後、原発事故処理水またはトリチウム汚染水と表記)の海洋放出(以後、廃棄と表記)の日程について、22日、政府は関係閣僚会議で「最短で24日に開始する」と決定しましたが、首都圏反原発連合はこれに強く反対し、抗議します。
 
 そもそも、様々な有識者が他の処理方法を提示していますが政府は一向に考えを変えず、一番安価な方法である海洋廃棄ありきで進められてきた計画であり、ここに一番の問題があります。また、それに沿うように、原発事故処理水の安全性についても都合の良いものしか採用せずに、「安心安全」のプロパガンダを続けてきました(2016年の「トリチウム水タスクフォース」による報告書で、5つの選択肢の処分にかかる「時間」と「費用」が試算され、「海洋廃棄」は88ケ月、34億円以内と最も低コストであるとされました。が、現時点の更新された試算では「時間」は30から40年、「費用」は1200億円と増大され、その優位性は覆されているのです)。
 
 しかし、トリチウムの安全性についての確実なデータは存在しておらず、政府が言うところの「科学的立証」を認めることはできません。また、溶け落ちた原発の炉心に直接接触した汚染水を処理した水を海洋に廃棄するのは世界史上初のことですが、これはトリチウム以外にも、さまざまな放射性物質を含んでいることを意味し、その全容は不明なのです。にも関わらず、政府は「処理水は安全だ」という虚偽の前提に立ち、大きな課題を「安全性」ではなく「風評被害」に置き換え、問題を矮小化してきました。
 
 この拙速な日程決定について政府は、タンクが満杯になるという理由を挙げていますが、原発近辺にはタンクを新設できるエリアがありますから、それは理由にはなりません。タンクを増設し引き続き原発事故処理水を陸上で管理し、最適な処分方法を様々な有識者を交えながら議論すべきです。
 
 岸田首相は汚染水海洋廃棄を「福島復興のため」などと言っていますが、少なからずの有権者は、岸田首相が党内の岸田下ろしに抵抗するために、最大派閥の安倍派を含む原発推進派に気をつかったのではないかと疑っており、もしそうであれば岸田首相は自分のために国民を欺いているとも言えます。
 
 また、岸田首相は「風評被害についての全責任をとる」と言っていますが、福島県漁連との面会の約束を守らず日程を決めた人物の、何が信用できるのでしょうか? 2015年の「当事者が納得しない限り放出はしない」という約束はどうなったのでしょうか? 約束を果たせない政府に責任感は期待できません。
 
 一番の当事者である全漁連は未だに海洋廃棄に反対しています。また、多くの国民も「安全性」について懸念しています。そのような状況下で、岸田首相はIAEAや米国大統領のお墨付きを盾に、太平洋諸国をはじめとした諸外国の懸念も、漁業者をはじめとした国内の反対も押し切り計画を断行しようとしていますが、この人の目はいったいどこを見ているのでしょうか。国民の声を聞く耳も、姿を見る目もない首相には辞めていただきたい。
 
 海洋廃棄ありき路線で、原発事故処理水は安全であるという前提をでっち上げ、処理水の安全性ではなく「風評被害」に目をそらさせようとするイカサマは、一番の当事者である漁業従事者だけではなく、魚を食する、海を楽しむ全ての人々への冒涜に他なりません。岸田首相と日本政府は考えを改め、この野蛮な計画を中止するべきです。
 
2023年8月23日 
首都圏反原発連合 - Metropolitan Coalition Against Nukes –
 
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★首都圏反原発連合:ステートメント 【福島第一原発のトリチウム汚染水の処分方法について】(2020年10月31日)

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★首都圏反原発連合:ステートメント 【福島第一原発のトリチウム汚染水海洋放出の政府方針決定を受けて】(2021年4月22日)

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