首都圏反原発連合:ステートメント【『GX脱炭素電源法』成立への抗議声明 】

Posted on by on 6月 4th, 2023 | 首都圏反原発連合:ステートメント【『GX脱炭素電源法』成立への抗議声明 】 はコメントを受け付けていません

首都圏反原発連合:ステートメント【『GX脱炭素電源法』成立への抗議声明 】
 
 首都圏反原発連合は、5月31日に参議院本会議で賛成多数により可決、成立した『GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法』(原発束ね法)に反対し、強く抗議します。
 
 『GX脱炭素電源法』とは、『原子力基本法』『電気事業法』『原子炉等規制法』『再処理法』『再生可能エネルギー特別措置法』をまとめたもので「束ね法」と呼ばれていますが、成立した内容は、2011年に起きた東京電力・福島第一原発事故の未曾有の被害と教訓とを全く無視した、惨憺たる原発推進法と言えます。
 
 端的に問題を指摘すると、まず、原子力の憲法とも言える『原子力基本法』に「原発の活用は国の責務」と記載されました。これは2014年、自公・安倍政権時に「原発は重要なベースロード電源である」と記載され改悪された『エネルギー基本計画』より更に、原発を推進する確固たる根拠になってしまいます。また、「国の責務」としたからには、公的資金や国費を原発産業に投じていくことも可能になります。
 
 次に、新たな運転延長認可制度が成立。これにより、築60年を超える老朽原発の運転が可能になりました。これまでの基準「40年+20年」の枠組みは数字としては維持されているものの、これを運転開始後の経過年数ではなく運転年数とし、運転停止期間を除外とすることで可能としたのです。具体的には原発事故以降、約12年にわたり停止している原発は23基ありますが(柏崎刈羽2、3、4号機は15年)、その期間はカウントされないことになります。
 
 原発施設の経年劣化、特に原子炉の劣化については十分なデータがなく、多くの原発の耐用年数は40年とされていることからも、これはあまりにも野蛮な制度と言えます。60年を越えて運転した原発は世界にひとつもなく、国内では40年以内の原発でも劣化によるトラブルが発生しています。また、点検漏れによる事故も発生しています。規制内容が不透明なまま、枠組みだけが先行した危険極まりない制度と言えます。
 
 また、これまでは運転開始後の経過年数40年が基本で、原子力規制委員会の審査に合格すれば、1回に限り20年の延長ができました。しかし、「束ね法」では運転期間に関するルールを、『原子炉等規制法』から『電気事業法』に移しました。これはすなわち、運転期間に関する決定権を、原子力規制委員会ではなく、『電気事業法』を所轄する経済産業省が持つことになります。原発を規制する側ではなく、推進する側のさじ加減ひとつで運転期間が決められてしまうのです。
 
 このような原発推進への拙速な流れは、カーボンニュートラル目標達成の為と謳われていますが、実際には、この目標を利用して原発を推進しているだけです。与党や国会内には原発事業の利権に絡む議員もいますし、核武装論も根強くありますから、原発を推進したい人々にとって、脱炭素やウクライナ有事起因のエネルギーの高騰は追い風なのでしょう。しかし、原発を推進し前代未聞の60年越え運転に賛成することは、反知性以外の何ものでもありません。
 
  この「束ね法」は、日本のエネルギー政策の大改悪と言えます。福島第一原発事故はまだ収束しておらず、未だに原子力緊急事態宣言の下、放射能汚染のために故郷に戻れない人々が多く居る中での異常事態です。地震が多い昨今、今後、再び原発の過酷事故が起きた場合、法案に賛成した自由民主党、公明党、日本維新の会、国民民主党や賛成したすべての国会議員は、責任をとることができるのでしょうか? 彼らを心から軽蔑しながら、「束ね法」の撤回を求めます。脱炭素政策と原子力産業は切り離して議論されるべきです。
 
 電源構成での原発由来の発電は原発事故前でも3割程度、事故後は0.5割前後にとどまっています。また、現在の『エネルギー基本計画』でも目標は2割適度となっています。たったこれだけの為に、どれほどのリスクを負うのかは福島の事故をみれば一目瞭然です。一旦事故を起こせば、放射能による被ばくや環境破壊などに伴い国富の流出を招く原発は、クリーンエネルギーではありません。原発は即時禁止し、その他の現存の発電方法を用いながら、再生可能エネルギーやゼロエミッション火力を迅速に推進し活用することを強く望みます。
 
2023年6月5日 
首都圏反原発連合 - Metropolitan Coalition Against Nukes –
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

« ★正法眼蔵 – ロック・反原発・うらかす – wakaこと若林一彦さんを偲ぶ会
首都圏反原発連合:ステートメント 【原発事故処理水海洋廃棄日程の閣僚会議の決定を受けて】 »