NO NUKES PRESS web Vol.019(2019/07/25)

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NO NUKES PRESS web Vol.019(2019/07/25)
 
NO NUKES! human chains vol.09:横山健さん ロングインタビュー (聞き手:Misao Redwolf)
 
福島原発事故発生から8年経ちましたが、原発事故はいまも続いています。事故収束もままならず放射能の放出が続き、避難生活者も5万人と言われています(2019年3月現在)。圧倒的脱原発世論を無視し、愚かな現政権は原発を推進していますが、原発に反対しエネルギー政策の転換を求める人々の輪は拡がり続けています。【NO NUKES! human chains】では、ゲストの皆さんへのインタビューを通じ、様々な思いを共有していきます。
 
【NO NUKES! human chains】では、ゲストのかたに次のゲストをご紹介いただきます。Vol.09ではTOSHI-LOWさんからご紹介いただいた、横山健さん(ミュージシャン/Ken Yokoyama/Hi-STANDARD/BBQ CHICKENS)のロングインタビューをお届けします。
古賀茂明さん吉原毅さん落合恵子さんドリアン助川さん島昭宏さん後藤正文さん細美武士さんTOSHI-LOWさん横山健さん


【NO NUKES PRESS web Vol.019(2019/07/25)】NO NUKES! human chains vol.09:横山健さん @KenYokoyama ロングインタビュー(聞き手:Misao Redwolf) https://pic.twitter.com/wjSae9e7iC http://coalitionagainstnukes.jp/?p=12739

 
 

– 原発が必要だと言っているやつがまだいるんだ? –
 
Misao:福島第一原発事故を引き起こした東日本大震災が起きた2011年3月11日ですが、横山さんはどこで何をされていましたか?
 
横山:震災の日、ぼくは後輩の結婚式に出席していて青山にいたんです。新郎も新婦も地方の人たちなんですが、ふたりが東京で出会ったので、両方の親族をみんな東京に招いて結婚式をやっていたんです。「○○ちゃんのおかげで、花の東京で酒を飲めるとは思わなかったよ、カンパ~イ!」と奥さん方の親戚の人が乾杯の音頭をとった途端に、揺れたんですね。
 
一瞬、これは結婚式のアトラクションで仕込みかとも思いましたが、本当にすごい揺れでビックリして、これはただごとではないぞとわかりました。でも、「この建物はものすごく耐震で作られているので大丈夫です」という会場アナウンスがあり、なぜか、そのまま式をやりましたね。会場の中は、みんな事の重大さに気づきたくないような空気でした。揺れたのは披露宴が始まったばかりの時でしたが、そのまま披露宴をやり終えて、夕方6時頃に車で帰路につきました。
 
ぼくは青山から車で20分くらいのところに住んでいるんですが、帰宅するまでに4時間半もかかりました。脇道も全部詰まってしまって、ほんとすごい渋滞だし、ヘルメットをかぶった帰宅困難者といわれた人たちが歩いていましたね。千駄ヶ谷駅前で1時間半ぐらい車が動かなかったときは、さすがに「これはどうなるんだろう、弱ったなー」と思いました。ようやく家に帰ってテレビをつけて、津波が来て大変なことになっているということを認識したのは、夜の10時半頃でしたね。
 
Misao:そのときは、福島の原発のことは頭にありましたか?
 
横山:まったくなかったです。原発というものがこの世に存在しているとか、そういうことは考えて暮らしていなかったですね。でも翌日、福島第一原発1号機が爆発して、電源喪失だとかなんだとニュースでやっていて、「チェルノブイリみたいなことが福島で起こった。これは、もう原発なんかあってはダメでしょ」と思ったんですね。普通そう思いますよね? で、ツイッターでつぶやいてみたんですが、ものすごくヒステリックに叩かれたりしました。エネルギー問題をどうするんだとか、代替案はあるのかとね。いまでも揚げ足とられるくらい攻撃されましたよ。
 
たしか、ツイートするまでに何日かは考えました。事故前から原発について考えている人はいたと思うんですが、バンドマン界隈で最初に「原発いらない」とツイッターで発信したのは、ぼくだと思うんですね。それで、ものすごく叩かれましたが、「代替案だとかエネルギー問題だとか、そんなものはこの危なさに比べたらくだらないじゃないか」とすごく思ったんです。8年経ったいまもその感覚ですし、小難しいことは一切考えていなくて、正直言って「原発問題まだやっているの?」「原発が必要だと言っているやつがまだいるんだ?」と思っています。
 
 
– だれもお前と同じじゃないんだよ –

Misao:原発は政治的なことではないんですが、ミュージシャンがこういうことを言うと「音楽に政治を入れるな」ということを言う人たちがいます。ネトウヨや原発推進派に叩かれるのはまだわかりますが、横山さんのファンや音楽好きの方でも、そういう反応をする人がいましたが、そのときはどう思われましたか?
 
横山:そのときは頭にきたし、「そんなことを言うなよ」と思う気持はいまもありますが、音楽との関わり方は人によって違うので、いろいろな人がいて当然だと、8年経ったいまでは冷静に思えますね。それこそ、ピエール瀧さんのコカイン問題も、そういうことと絡みますが、音楽ってときには発信する側、演る側の人格が求められる場合もあって、そういう聴き方をする人もいるし、まったく関係のない人だっているわけで、どちらでもいいんですよね。投げやりな意味ではなくて、どうでもいいんです。
 
ただ、ツイッターでの議論は、ぼくはもうやめました。ぼくからすると、ものすごくエネルギーの浪費なので。いまだにツイッターでがんばっていらっしゃる方をいっぱい見ていますが、ミュージシャンは思ったことはステージで発するべきだし、人が作ったSNSというプラットフォームじゃないところで発信すべきだと考えています。たとえば、今回のフリーペーパーのような場を与えられれば、もちろん発信しますが、思ったことを手軽にポンポンとSNSで発することはもうやめました。
 
いまでもまとめが残っているくらい、当時はこちらも相手を汚い言葉で罵ったりもしましたよ。お互いに顔が見えないし、パソコンに向っていると自分が絶対正義みたいになるじゃないですか。だから、どうしてもそうなってしまうんですよね。顔を見て話せば、少しはお互いの温度もわかるんですが、顔が見えないと思わぬ方向に行ってしまう。あれは、いいのか悪いのかはわかりませんが、ひとつの経験ではありましたが、もうやめましたね。
 
Misao:SNSでの議論は、すごくエネルギーを使って消耗しますよね。私はデモの主催者ということで、誹謗中傷やデマもたくさん流されましたが、活動の実務がいっぱいいっぱいで余裕がなくて、ほぼ放置していたんですが、デマを信じる人たちもいて。私はもともと、原発問題を発信するためにツイッターを始めたのですが、いまではニュースをチェックしたり、自分たちのイベントを発信するだけって感じですね。
 
横山:ぼくなんか、「もーんげーーー!!」と「攻めっから」しか言ってないですから(笑)。少し話がズレちゃいますけど、面白いやつがいて、いや、面白いというと違うのかな。「今日は沖縄を攻めっから」とツイートしたら、「歴史的観点からいうと『沖縄を攻める』なんてことをよく言えるな」とメンションしてくるやつがいたんですよ。
 
Misao:私も以前、ツイートの中で障害者を差別する内容ではないところで「五体満足」という言葉を使ったときに、「これは差別用語だと」とメンションされたことがありました。その人の主張を読むと、私からしたらかなり独善的に思えたんですが。「今日は沖縄を攻めっから」というのも、「沖縄でライブやったるぜ!」ということなのに、文字面だけでジャッジするなんて…微妙ですよね。
 
横山:微妙ですよね。そういうのは全部、フルにシカトしています。でも、それは差別用語だと指摘されて、正すべきことなんだとわかったこともあります。たとえば、この前ぼくはうかつに、レズビアンのことをレズって書いてしまったんです。そうしたら、レズビアンの方から「レズはちょっと勘弁してください、レズビアンと言ってください」と言われました。それには「わかりました」と答えて謝罪して訂正しましたが、「沖縄を攻めっから」はいまでもやっています。
 
そんな感じで、自分の中でジャッジしていくしかないんですよね。全部、相手にはしていられないですもん。そこで最終的に行き着いたところが、「だれもお前と同じじゃないんだよ」ということなんです。これがSNSでの経験を通じて得たことですね。ぼくの言っていることが正解ではないし、顔の見えないアンタが言っていることが、ぼくにとっても正解ではないから。言うのは勝手だけど、まぁ、知らないよということですね。
 
 

– ぼくがステージで発信することで誰かを傷つけている –

横山:ぼくは自分の正義にのっとって、「原発はいらない。代わりのエネルギーとか経済のこととかはさておき、いますぐ止める方向に舵を切らないと」「原発はなくす方向で、これ以上増やさない。いまあるものは、何万年かかかるなら何万年かけて処理していくということで方向付ける」と言っていました。でも、ライブで日本中を回っていると、親御さんが東電で働いていた子が、お客さんとして普通にいるわけですよ。そういう子が、自分の人生を汚されたような気持ちになって、ライブにこなくなっちゃったんですね。
 
ぼくには、それが悲しかったんです。ぼくがステージで発信することで、ぼくは誰かを傷つけている。さっきの、「アンタと同じじゃないんだよ」とも絡みますが、それは起こってあたりまえのことなんです。でもそのことがあってから、もうヒステリックに言いたくないなと思ったんですね。ヒステリックという表現があっているかどうかわかりませんが、それをプライオリティの一番に置くのはやめようと。自分は問題意識をもっているし、問題意識ということで提示することはいいけれど、原発、東電に特化した発信をするのはやめようと思いました。
 
原発事故直後の一連のSNSなどのやりとりでも、何人かそういう人はいましたね。「自分は、東電のお金でここまで育ったので、原発はよくないと思いつつも、どうしたらいいのかわかりません」といった感じで。そりゃそうだよね。自分で選んで東電のお父さんのところに生まれてきたわけじゃないもんね、と思うし。そういう人にまで、「それはアンタの弱さだよ」と切るわけにはいかないんですよね。ぼくは切れないです。
 
原発に関しては、あんなものはよくないに決まっていますよね。100%、1000%、1万%よくないに決まっているんですが、そこに関わる人たちを汚したくはない。汚したいのは、その利権をむさぼっている連中ですよね。そこがすごく難しいんだけど。数字とか、ぼくにはどうでもいいし、いま何基稼働していて、何ベクレルだとか正直言って忘れているし、新しい知識を取りにいこうとも思わないです。ただ、あんなものはあっていいわけはないでしょうという原始的というか基本的な思いと、そういうふうに思うことで誰かを汚すことはしたくないなという思いの間で、自分ができる発信をしていっている感じですね。
 
だけど、ちゃんと考えると、政治と、ぼくがやっている音楽は地続きだから、音楽以外のことをやって色々言われたりしても、「だって音楽って生活の一部じゃん」と思ったりするんですね。昔から、ぼくはそれを言われるとほんとうに意味がわからないんです。音楽だけやっていろと言うんだったら、税金を免除してくれたらそれだけやりますよ。いや、ミュージシャン特別手当も給付してもらわないとなぁ。最低それくらいはねぇ? そしたら国にものを申すという姿勢なんざ、金と引き換えに捨ててやる。それなら、ぼくは何も言いません。生活者ですからね、われわれも。しかしそんなことは起こりえない。なので言って当然なんですよね。ただ、言い過ぎると自分のファンだけでなくても傷つく子たちがいるとわかったし、SNSを使って吠えることではないなというふうに着地しました。
 
 
– デモ –

Misao:原発は国策なので、原発事故にしても東電だけの責任ではないし、ましてや従業員に責任はないと思いますよね。私たちは政府に向けてデモをやっているので、ある意味一方通行といいますか、横山さんとファンの方の間のできごとのようなことを、想像したこともありませんでした。
 
横山:それが、政府に向けてのデモで政府に届けばいいんですが、届かなくてもいい人たちが傷ついてしまうこともあるんですよね。デモは昔からいろいろな国であるし、日本もこういうことをすればいいのになと昔から思っていたので、間違っているとは一つも思わないですね。日本でも原発事故以降はデモが増えたし、どんどんやるべきだし、こういうふうに思っている人たちがいるよということを示す、民間の政治的行動という意味では、ものすごく力強い見せ方なので、デモはものすごく好きですね。
 
反原連の官邸前抗議にも、2012年の一番参加者が多いときに参加したことがありますよ。参加というか、端っこから見てる感じで、プラカードをもったり、一緒にコールをしたことはなかったんですが。でも、デモも難しいですよね。その中で、分断が起こったりとか。
 
Misao:そうなんですよね。TOSHI-LOWさんのインタビューでも、そんな話になりました。分断を起こさないように我慢したり配慮したりしていても、起きちゃうんですよね。
 
横山:元々、強い権力を鵜呑みにしない人たちというのは、性格が強い人たちが多いじゃないですか。そういう人たちが集まって、カウンター行動を起こすわけだから、それは衝突しますよね。それで、衝突することでだれが一番得をするかというと、やはり権力なんですよね。そこを考えればなんとか我慢できそうなものも、できない人たちもいるんでしょうね。ものすごく、これもデリケートな問題ですよね。
 
Misao:加えて、市民運動の特異性というのがあって、活動の場を自己表現や自己顕示の発露の場、承認欲求を満たす場にする人たちがいて、そういう人たちがトラブルを起こしがちです。ただ、毎週の金曜官邸前抗議も300回以上になって、参加者も300~400人と規模が縮小していますが、そのぶん、トラブルも減ってはいます。最盛期に参加していた若い人たちは日常に戻ったし、参加者の半分以上は、仕事も子育ても終えて時間に余裕のある高齢の方たちで、「孫のために頑張る」といった感じで通い続けておられますね。
 
横山:結局、デモというのは、何万人規模になったときが一番注目されるし、海外メディアでも報道されたりして注目を浴びますが、ほんとうにコアな人たちというのはふるいにかけるとそれぐらいになるかもしれないですよね。あとはみんな、ちょい噛みなんですよね。
 
Misao:そうですね。むしろ、ふるいにかけられた人が残るというのは、間口が狭くなったということで、ちょい噛みの人たちが来るということが、大きなムーブメントであるということでもあるので、私たちは大歓迎でした。2012年の官邸前抗議では、ちょっと様子を見に来た人たちも大勢いたと思います。
 
横山:それ、ぼくです、ぼく。
 
 

– 毛穴からにじみ出る人格 –

Misao:横山さんは、安倍政権への批判を発信されておられますが、原発以外のことでもいいので、お話を聞かせていただけますか?
 
横山:ぼくは、家柄も含め安倍さんのすべてがきらいですね。ボンボンに政治をやらせちゃダメですよ。ボンボンに庶民のなにがわかるか、ということですよね。雇用を増やすだとかなんだとか言ったって、その場しのぎのことしかできなくて、本当の弱者を救えないのは、庶民をわかってないからですよ。あと、しゃべり方なんかも生理的にきらいですし、政治家としての品格がメチャメチャ。首相で一国の長であるなら、国会で野次を飛ばされても野次を返さないでほしいですよね。あれで、なんで何期も続けてやれるんだろうかと思うんですよね。
 
Misao:あの人は国会で野党が発言中に、麻生さんと並んでニヤニヤしているじゃないですか。ああいった、野党や国民を見下しているとしか思えない態度も含め、生理的にくるものがありますよね。
 
横山:そういうのって、顔つきがきらいだとか、しゃべり方がきらいだというところだけではなくて、ほんとうに毛穴からにじみ出てくるものだから、あの人がもう少し真摯に深く考えていてくれたら、ぼくもこういう印象は持ってないかもしれないですよね。だから、そういう印象を与えるのは、あの人の人格なんですよね。人格がにじみ出ているんです。アンテナがそれをキャッチしていることなので、やみくもに安倍がけしからんと言っているわけじゃないんですよね。
 
Misao:あの人は、オリンピック誘致のために「原発の汚染水はコントロールされている」と嘘をついたり、最近は5年半ぶりぐらいに福島第一原発の視察に、しかもスーツを着て行っていましたが、原発事故が収束できていないことは日本の中でも最も重要な問題の一つなわけじゃないですか。それが、結局6年弱行かないというのは、ほんとうに関心がないんだなと思いましたし。
 
横山:そういうところが、いちいちあの人はイヤですよね。
 
Misao:いろいろなことでウソをついて、森友や加計問題もまだクリアになってないし、自民党議員の不祥事も目白押しで。それでも、まだ国民の4割ぐらいの支持がありますが、それについてはどう思われますか?
 
横山:それはもう、いろいろな人がいるんだなと思わざるを得ないですよね。日本って狭いようで、ものすごく広くていろいろな考え方があって、たとえば地方にいくと、自民が強いというのはうなずけたりもするんですよ。ぼくも、元々は自民党って好きなんですよね。ぼくは1969年生まれなので、自分が子供のころはもう高度経済成長といわれていた時期ではないですが、自民党政権下の日本で育ったという意識があるし。自民党には、タカ派からハト派までいろいろな人がいて、一口で語れない部分はあるのですが、本来はきらいではないんです。
 
なんですけど、ぼくは安倍さんがすごくイヤで、いまの自民は支持する気にはならないですよね、当然。ところが、地方にいくと皆さん、それぞれ食い扶持があるので、それこそ農協の問題だとか。たとえば、農家の人たちは自民党のこういった政策でぼくたちは食えているんだからと支持するでしょ。あと、旧態依然とした企業の組織票とか、そういうことで勝っているんだなと思いますね。ほんとうに支持されているのではなくて、やはり何か組織的、伝統的、システムの問題なんかが影響している。
 
だけど、そんなことが続けば続くほど、若い人たちが「日曜日に、なんで投票に行かなきゃいけないのか?」と、バカらしく思えてくるということにもなりますよね。その子たちがみんな投票に行ったら、もしかしたら野党が勝つかもしれないのに。これだけ、若い層が選挙に行かない時代なんだから、手軽にネットでも投票できるようにすればいいと思うんですよ。今週の日曜日にぼくが住んでいる区の区議会議員選挙があるんですけど、ぼくもわざわざ投票所に行くのは面倒くさいですもん。なんでいちいち投票所に足を運ばないといけないんだとか思うしね。ネットでの投票って、セキュリティの問題などもあるのでしょうがね。
 
選挙のあり方なども含めて、この国の法律のあり方に、いろいろ無理があると思ったりするんですよね。全生活者が満足するシステムなんて、もしかして作れないのかなとか、最近よくそんなことを思いますね。民法だったり、日本の伝統的な考えに基づいたとされる条例などであったり。もはや、おじいさんおばあさんの世代には合うかもしれないけど、若者の世代にはフィットしてないだろうと思いますしね。本来は政治家の人たちは、そういうことを考えるのが仕事じゃないですか。われわれなんて、ぼさーっと生きているだけでいいのに。もっといい、強力なリーダーシップを発揮してくれる人が出てきたりとか、どうにかならないものですかね。
 
 
– 美しい日本を取り戻す –
 
Misao:いまは過渡期で、実際の世の中の多様化に、法律や条令がついてきていないと感じます。デモ申請に関わる東京の公安条例は昭和20年代から変わってないので、ヘイトスピーチのデモなんかも条例で防げないですし。それに、これから人口が減少する中で、若者たちがどう高齢化社会を支えていくのか。AIやベーシックインカムの導入も有効なのではないかとも思うのですが、大転換をうまくしていかないと、ヤバいかなと思うんです。
 
横山:そもそも年金だって、70代ぐらいのぼくらの親世代にとっては神話だったわけじゃないですか。それが、ぼくたちの時代になったら年金が受け取れないとか、言っていた金額と違うとかあるわけで、「それなら結局、頭のいい人たちの考えるシステムってなんなの?」「政治って機能しているの?」「政治家っているの?」「一回ぶっ壊して日本やめない?」みたいなことになりますよね。結局、いまだに敗戦国なんですよね、日本って。話がすごく飛躍しますけど、やはり安保があるうちはダメですよ、まったく。日本は独自の発想なんてできる国ではないですよね。
 
Misao:私も同じ考えです。安倍さんがしているのは、アメリカの植民地的な振る舞いだし。民族というくくりではなく、この島に住んでいる人たちの誇りを取り戻していかないと。
 
横山:それを取り戻すには安倍さんではないですよね。「美しい日本を取り戻す」とか言っているけど。この文言自体は素晴らしいと思ったんですが、あの人の「日本」に対するこだわりは、たぶん幼いときからあるものではないかと思うし、それはそれで素晴らしいことだとは思います。日本には2000年以上も連綿と続く伝統があるし。ぼくはあらゆる宗教を信じませんが、八百万の神がいて、桜はきれいだし、日本人って慎ましやかで勤勉ですごくいい。何しろ自分の生まれた国だしね。「美しい日本を取り戻す」って素晴らしい、と思ったんですけど、結果がこれではね。
 
Misao:やはり、本当に「日本を取り戻す」には、安保をなんとかしないと。これは戦後の日本社会の大きな負の遺産だと思うんですが、そこから変えようと思っている政治家ってほとんどいない。共産党は昔からそれを言ってはいますが、どこまで本気でやろうとしているのかはわかりません。安保を白紙撤回して、永世中立国にすればいいと思いますよ。原爆も原発事故も経験した日本こそ、平和国家として永世中立化すればいい。小さい国だから、そうやって防衛することは理にかなっているとも思います。
 
横山:小さいときからぼくも、「永世中立国」は気になっていました。社会の授業で、スイスは永世中立国なんだと知るじゃないですか。「なんで、日本はそうできないの?」と不思議ですよね。経済を成長させるには、ある程度のことを犠牲にしていく必要があったのかもしれませんが、それはもう頭打ちだということはわかったじゃないですか。日本は中国にも経済では勝てないんですよ。だったら、いま考え方を転換して、そうですよ! 永世中立国になりましょうよ、日本は。まずは安保を破棄して、永世中立国に!
 
 

– ギターを膝に置いて弦を弾く行為 –
 
Misao:横山さんはずっと音楽も続けてこられて、PIZZA OF DEATH RECORDSの社長としても20年を迎えます。加えて自分のプライベートの生活もあるわけですが、いままで生きていく上で、やっていく上で、大切にしてきたことは何でしょうか?
 
横山:今年で、ぼくは50歳になるんですね。これはずいぶん前から言っていることなんですが、次世代に何を残せるのかなということをいつも考えていますが、あきらめたわけじゃないですが、ぼくら程度のものでは結局、肩に力を入れても何もできないんだなというのが、ここ数年の実感ですかね。震災があって原発事故があった直後は、子供たちに何が残せるか、というような強い気持ちがありましたが、それは心の中に置きつつも、おれはおれの人生をまっとうしようという、最近はそんな心境ですね。一番大切にしていることといえば、やはりギターを膝に置いて弦を弾く行為、これを大切にしようと思っているぐらいです。
 
Misao:それはたぶん、弾くという行為の中に、横山さんのいろいろが入っているんだろうなと想像します。
 
横山:大きくいうと世の中への発信とか表現とか大層なことになりますが、自分は結局、何をしたいのかを考えると、そこから始まるわけです。弾いた瞬間に、やはり全部のことを瞬間に考えるし。そうなので、これというモットー的なものは最近はないですね。
 
Misao:仏教で言えば禅だったり、華道や茶道などの「道」ってあるじゃないですか。そんな境地なのかなと想像しますね。
 
横山:どうなんですかね。もしかしたら、そうなのかもしれませんね。ちょっと若いとき、30代後半とか40代くらいのときは、闘争心という何かメラメラしていて、「ぼくたちの世代はこの日本をどう支えるんだ」みたいなことを考える心の体力があったけど、50になってくるとなんていうのかな、結局、自分に向っていくというか。もしかしたら仙人になってきているのかもしれませんね(笑)。
 
だけど、ステージにおいてや作品を作ることについては、まったく温度は下がっていないどころか、かなり上がってきているんですよね。ただ、日々の発信の仕方が少し変わったりとか、ものごとの日常の大事なことの重心が少し変わったりとか、そういったことはありますが、音楽に関しての温度はメラメラきていますね。いつでも金属バットをもって出ていく覚悟はありますしね。
 
Misao:震災後にHi-STANDARDを復活させたことは、大きな変化ですよね。大きなプロジェクトを始めるというのは、ただでさえなかなか決断がつきにくいことだと思います。お話を伺う中で、震災と原発事故は、ハイスタ復活も含め、横山さんに大きな影響をもたらしたのかなと思いました。
 
横山:活動はもちろん、思考もずいぶん変わりましたし、すごく大きなできごとでしたね。過去形にしてはいけないのかもしれませんが、あれがなければ、ぼく自身も違った人生になっていたわけですから。ステージでも言ったんですが、Hi-STANDARDは日本のためにまた集まったんです。ぼくは本当はイヤだったんですが、やるしかないと。もちろん、メンバー3人で決めたんですが、自分を話し合いの席につかせるのに、やるしかないと自分で決めたわけです。そのときは自分のためではなかったんですが、あれからずいぶん時間が経って、いまはHi-STANDARDが自分のためにやれているバンドになったんです。
 
これは、第一に被災者の方々、それからいまでも震災のことなどで一生懸命やられている方々を傷つけたくはないんですけど、ぼくはHi-STANDARDを震災バンドにしたくはなかったんです。震災をきっかけにまた動かせたんですが、気持ちがついていかなかった。でも、はじめた以上は、どうしたらハイスタとして、ぼくはハイスタでいることに格好がつけられるのかと考えたら、やはり自分のためにやるしかないわけですよね。そうなると、人のためではなくて自分のためなわけですから、大義なくできるバンドにしたかったんです。
 
大義があって再結集したバンドではあるけど、大義なくやれるようになりたい。それには、震災バンドというくくりが元からあるわけではないし、すごく刺激的な言葉であまりよくないかもしれませんが、そういった、何か起こったら動くというようなバンドにはなりたくなかった。いまはそうではなく好きなペースでできているので、それはすごくよかったなと思っています。それはそうと、ここにある『NO NUKES PRESS』に「現在稼働中の原発9基」と書いてありますが、まだ9基も動いているんですね。
 
 
(2019年4月17日 東京都世田谷区にて)
 
 
横山健 <プロフィール>
1969年東京出身。1991年にHi-STANDARDを結成、ギタリストとして活躍。Hi-STANDARDとしてこれまでに4枚のフルアルバムをリリース。1997年には主催フェス「AIR JAM」をスタートさせ、日本のパンクロックシーンに大きな影響を与えた。
1999年にレーベル「PIZZA OF DEATH RECORDS」を法人化、社長を務める。3rdアルバム「MAKING THE ROAD」をリリース。インディーズとしては当時異例のミリオンヒットを達成した。バンドは2000年に活動を休止、2011年に活動を再開。
2000年にはBBQ CHICKENSを結成、これまでに5枚のフルアルバムをリリース。
2004年にはアルバム『The Cost Of My Freedom』で自身の名前を冠としたバンド Ken Yokoyamaとして活動を開始。これまでに6枚のフルアルバム・2度の武道館公演と神戸と幕張にて東西アリーナ公演を行い成功させる。2015年にはテレビ朝日系「ミュージックステーション」に長い音楽キャリアの中で初となる地上波へ出演。大きな話題を呼んだ。現在もKen Yokoyamaとしてのバンド活動を主軸に精力的に活動を行っている。
ギタリストとしては、Gretsch Guitar 132年の歴史において、初の日本人ギタリストのシグネチュア・モデルが発売された。また自身がプロデュースするギターとスケートボードのブランド「Woodstics」を立ち上げ、ESP GUITARSに於いても数々のシグネチュア・モデルを制作するなど、音楽シーンにおいて常に第一線で活躍している。
【横山 健 (Ken / Ken Band) OFFICIAL SITE】https://kenyokoyama.com
【PIZZA OF DEATH RECORDS】https://www.pizzaofdeath.com

<予告>NO NUKES! human chains vol.10
このインタビュー・シリーズでは、ゲストのかたに次のゲストをご紹介いただきます。横山健さんからは、石井麻木さん(写真家)をご紹介いただきました。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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