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NO NUKES PRESS web Vol.006(2018/06/25)
Posted on by 反原連 on 6月 20th, 2018 | NO NUKES PRESS web Vol.006(2018/06/25) はコメントを受け付けていません
NO NUKES PRESS web Vol.006(2018/06/25)
Opinion:『日米原子力協定』 – 47トンものプルトニウムを保有する日本
寄稿:伴英幸(原子力資料情報室・共同代表)
2018年7月17日に満期を迎え自動延長予定の『日米原子力協定』は、日本の核燃料サイクル政策に深く関わっています。 あまり馴染みもなく難しそうなこの協定について、伴英幸さんに解説していただきました。米朝首脳会談を通じ北朝鮮の非核化がフォーカスされていますが、日本はどうなのでしょう。日本は非核兵器保有国で唯一プルトニウムを保有しています。このことを改めて認識し考えていきましょう。
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【NO NUKES PRESS web Vol.006(2018/06/25)】Opinion:『日米原子力協定』 – 47トンものプルトニウムを保有する日本 寄稿:伴英幸(原子力資料情報室・共同代表)pic.twitter.com/kK9q3XUEaQ http://coalitionagainstnukes.jp/?p=11198
【NO NUKES PRESS web Vol.006(2018/06/25)】Opinion:『日米原子力協定』 – 47トンものプルトニウムを保有する日本 寄稿:伴英幸(原子力資料情報室・共同代表)pic.twitter.com/kK9q3XUEaQ http://coalitionagainstnukes.jp/?p=11198
-自動延長になる日米原子力協力協定-
この7月17日に日米原子力協力協定(以下、日米協定)が30年の有効期限が切れを迎え、自動延長になることが決まっています。自動延長になると、以降はいつでも協定を停止することができ、6か月の猶予期間の後に確定することになります。これは1988年に改定された現行の日米協定に明記されていることです。
日米協定の正式名称は「原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」。字の如く両国の協力は平和利用に限定し、軍事利用しないことを約束するものです。これは二国間の協定です。軍事利用していないことは、国際原子力機関(IAEA)が両国のそれぞれと締結する保障措置協定に基づいて、施設を査察することによって確認します。米国は核兵器国ですので、軍事用施設は対象外ですが、日本は全ての原子力施設が対象となります。
二国間協定ですから、日米共それぞれ多くの国々と協定を結んでいます。基本は同じでも細かいところでは違いがありますが、日本と米国との協定は非常に厳密な内容になっています。米国から輸入した燃料や原発などの資機材だけでなく、他国から輸入した燃料や使用済燃料、そしてプルトニウムにまで協定の内容が及ぶことになっている点です。日本の原発は全て米国のライセンスに基づいて建設されているため、使用済燃料やプルトニウムも協定の適用を受けるのです。この点は88年の日米協定でより厳しく強化された点です。
ところで、日本がこの日米協定に違反した場合には米国が全ての返還を要求する権利が定められています。現実問題としては考えられないことですが、日本が破棄した場合には独自の原子力開発を進める道が残ります。
-核兵器開発に再処理は不可欠-
日本は非核兵器国で唯一再処理が認められた国と言われます。1974年にインドがプルトニウムを使って核実験を行ったことがきっかけとなって、米国のカーター政権はプルトニウムの抽出を行う行為(再処理)を禁止する政策に転換しました。核不拡散政策の強化です。当時の日本は既にフランスに設計を依頼して東海再処理工場を建設し、まさに試験運転に入る直前でした。日本側はプルトニウムを単体で取り出さず、ウランと混合して製品化するアイデアを考えつき、結果として米国政府を納得させました。操業は認められましたが、一操業期間ごとに米国の事前同意が必要でした。そこで日本は奮発し、これを長期にわたって同意が得られるように10年越しの交渉を行い、今日の日米協定に持ち込みました。予め合意された施設での操業には事前同意は不要であること(包括同意)、この協定の有効期間を30年とすることなどを獲得したのです。
再処理技術は核兵器開発には不可欠な技術です。インドだけでなく、パキスタン・イスラム共和国、そして朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)などが核実験を行っていますが、これらは再処理によって取り出されたプルトニウムを使用したものでした。
-再処理と核拡散-
原子力の民生利用は当然の権利であり、日本が認められているのなら我々の国も認められるべきだとの主張を北朝鮮も行っていましたし、隣の大韓民国(韓国)でも、また中東の国々でもそうした主張があります。韓国は米国との強い交渉の結果、部分的に再処理研究を認めさせました。民生利用を口実に再処理技術が世界に拡散して行くことになれば、事実上の核兵器の拡散を意味することになります。
日本は核兵器を持たない(ただし技術は放棄しない)政策選択をしていますが、それは米国の「核の傘」で守られていることが前提です。ですから、かつてオバマ政権が核の先制不使用を宣言しようとしたときに、これを阻止したのが日本でした。先制不使用は核兵器で攻撃されない限り核を使用しないという意味ですから、通常兵器の攻撃でも核兵器で反撃することが可能だとする「核の傘」の効力がなくなることに危機感を抱いたのでしょう。
安倍政権が北朝鮮の非核化を繰り返し主張するとき、米国にも非核化を求めているのでしょうか?あるいは北朝鮮にも米国の「核の傘」に入ることを求めているのでしょうか?それとも現在の融和ムードを好機と捉え、東北アジアに非核地帯を作る、非核地帯条約の締結を呼びかけているのでしょうか?安倍政権に非核への深い考えがあるとはとても考えられません。
日本の原発推進派の長老たちの中には、原発から取り出したプルトニウム(原子炉級プルトニウム)では核兵器は作れないという主張が根強く残っています。しかし、あらゆるプルトニウムが核兵器の材料となるというのはいまや世界の常識です。原子力ムラの「常識」は世界の非常識なのです。
現在の日本は47トンものプルトニウムを保有しており、うち10トンは国内にあります。この状態で六ヶ所再処理工場を稼働させることになれば、さらにプルトニウム保有量は増加します。再処理はコスト的に非常に高く、民生利用と主張しても経済合理性がありません。まさに六ヶ所再処理工場の継続はプルトニウムと同様に世界の非常識となっているのです。
*この寄稿文は米朝首脳会談(2018年6月12日)の前に執筆されたものです。
『日米原子力協定』について、首都圏反原発連合発行のリーフレットも是非ご覧ください。
http://coalitionagainstnukes.jp/wp-content/uploads/2018/01/tomaru.pdf
伴英幸<プロフィール>
1951年三重県生まれ。生活協同組合専従を経て1990年に原子力資料情報室のスタッフとなる。95年から2015年まで事務局長を務めた。98年に共同代表となり現在に至る。特に核燃料サイクルの政策からの撤退に関心が高く、2016年2月の国際プルトニウム会議(東京)以来、六ヶ所再処理工場の廃止と余剰プルトニウムの削減問題に取り組む。
原子力市民委員会委員、環境NGOのネットワーク「グリーン連合」幹事、新宿代々木市民測定所理事などを務める。「六ヶ所再処理工場」に反対し放射能汚染を阻止する全国ネットワーク、上関原発どうするの? 瀬戸内の自然を守るために、などの運動にもメンバーとして参加。また、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会と放射性廃棄物ワーキンググループの委員を務める。