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NO NUKES PRESS web Vol.002(2018/02/22)
Posted on by 反原連 on 2月 18th, 2018 | NO NUKES PRESS web Vol.002(2018/02/22) はコメントを受け付けていません
NO NUKES PRESS web Vol.002(2018/02/22)
Lecture:河合弘之さん(弁護士・脱原発弁護団全国連絡会共同代表/映画監督)
2018年は脱原発へのターニングポイントになりそうな予感の中、1月16日に阿佐ヶ谷ロフトAで、毎年恒例、首都圏反原発連合主催の新年会「GENPATSU ZERO! 反原発新年会2018」を開催しました。(http://coalitionagainstnukes.jp/?p=10453)
今年は、昨年末大きな励ましとなった、広島高裁の伊方原発運転差し止めの立役者で映画監督でもある河合弘之さんと、「原発ゼロ基本法案」に期待が集まる立憲民主党のエネルギー調査会事務局長で衆議院議員の山崎誠さんをゲストにお迎えしました。
山崎誠さん、河合弘之さんの順番でレクチャー(講演)を催し、参加者のみなさんは熱心に耳を傾けていました。会場には立憲民主党の菅直人元総理もおみえになりました。
ここに両氏のレクチャーの全文をお届けします!
*山崎誠さんのレクチャー全文はこちら→http://coalitionagainstnukes.jp/?p=10701
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【NO NUKES PRESS web Vol.002(2018/02/22)】Lecture:河合弘之さん(弁護士・脱原発弁護団全国連絡会共同代表/映画監督)「伊方原発運転差し止め決定を語る」 http://coalitionagainstnukes.jp/?p=10694
【NO NUKES PRESS web Vol.002(2018/02/22)】Lecture:河合弘之さん(弁護士・脱原発弁護団全国連絡会共同代表/映画監督)「伊方原発運転差し止め決定を語る」 http://coalitionagainstnukes.jp/?p=10694
「伊方原発運転差し止め決定を語る」
-原発は運動で止められる
アメリカが日米原子力協定を振りかざし日本の脱原発を壟断することはない-
山崎(誠)さん、いい話をしてましたね。代議士になったら貫禄がつき、話に迫力も出てきたなと思いました。山崎さんのレクチャーの質疑応答で、「日米原子力協定についてのアメリカの意向」と「エネルギーの地産地消」の質問がでましたが、またこの質問がでたなと思いましたので、まずはそれについてお話しします。
「日米原子力協定があるから、日本はアメリカに抑え込まれて脱原発ができないのではないか」「日米原子力協定は日米地位協定と同じ。だから結局、われわれが運動をしても、最後にはアメリカにブロックされてしまうのではないか」「だから、われわれが闘っても意味がないのではないか」と言ったやつがいるんです。誰だか知っています?「矢部宏治」という男なんです。(注*ノンフィクション作家。著書:『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(集英社インターナショナル:刊)
この人ね、一応、脱原発派ではあるんですよ。だけど、ろくに勉強もしないでいい加減なことを言いまくっている。でも、もっともらしいじゃないですか。アメリカ帝国主義に抑え込まれて安保の問題と同じように、脱原発も完全にアメリカに壟断されているんだと。そういうことを矢部宏治氏は言ったんです。
で、それを信じる人が多いんですよ、脱原発派にも。それがどういうことになるかというと、脱原発運動なんかしてもムダだということになるんです。どんなにがんばって押して押しても、最後はアメリカにダメ、バカ野郎と言われて終わりになっちゃう。そんなことが本当なら、脱原発運動なんてやる意味ないじゃないですか。しかしそれは間違ってる。彼は、日米原子力協定を論じておきながら、条文を一つも読んでいないんだ。恥ずかしくないですか。
ぼくは、矢部宏治氏のその本を読んで、逐一検討しようと日米原子力協定全文を再び、何回も読んだ。そこには日本は原発をやめるなとか、原発をやれなんてどこにも書いてない。全く書いてないんですよ。皆さん、そのことだけは頭に入れてくださいね。
書いてあることは何かというと、「原発をやって、その結果できる兵器級のウラニウムとかプルトニウム、これは絶対にズルしてごまかしてどこかに隠しちゃダメだよ」「テロリストや泥棒に盗まれちゃダメだよ」と。そのために「補償措置を講じてきちんと監視をするから、その監視にはちゃんと協力しろよ」「絶対に約束を守れよ」と。「プルトニウムは絶対に横流しするなよ」「外に盗られませんということを守れよ」ということが、これでもかこれでもかと書いてある。アメリカの日本に対する核関係の関心事は、プルトニウムを盗られないかどうか、ごまかされないかだけなんです。
それを、矢部宏治氏はろくに条文も読まないで、いい加減なことを言っている。
たしかに「日米地位協定」というのはアメリカが好きなようにできるようになっているんです。アメリカの軍機が横田基地に入ってグルグル回ったってこちらは全然チェックできないし、東京の上空はアメリカ軍のためにきちんと取ってあって、日本の民間飛行機はそこをよけていかないといけないとか、屈辱的なことはいっぱいあるの。「こんなことで日本は独立国なのか」と怒って、それを是正しようとするのはわかる。だけど、原発問題を論じるときに同じだと思ったんだろうね、条文をろくに読んでないので。
それで、ぼくは岩波の『世界』という本に、いま言ったようなことを書いたわけです。「なにもろくに勉強もしないで条文も検討しないで、いい加減なことを書くな!」と。「お前のおかげで脱原発の運動であきらめたやつだって出てきているんだぞ!」と言ったわけです。
ぼくは矢部宏治氏と親しいIWJの岩上さんを通じて、「公開討論をやるから出てこい、対決しよう」と彼に言ったんです。ちゃんと、文書でも申入れた。そしたら、彼はなんと言ってきたか。「河合先生のことは尊敬しています」。冗談じゃない!おれはあんたなんかに尊敬なんかされたくないよ、ちゃんと論争しよう!と彼を呼んだんです。でもね、彼は逃げちゃった。
ぼくにこう言われて論争は逃げるくせに、訂正記事は書かないんです。矢部氏のその本は結構売れていて、すごく脱原発の運動に悪影響をあたえています。なんていうかな、筋力をなくすような注射をしたのと同じです。ほんとうに良くない。はじめに、これを言っておきます。
-「政策障害」を取り除き自然エネルギー大国への道を-
それから、山崎さんへのもう一つの質問で「地域自立型、地域に根ざした地産地消のエネルギーについて」というのがありました。
東京はどうするの?という質問について言うと、自然エネルギーには大企業が大規模にやる自然エネルギーと、それから地産地消型の協同組合とか、いろいろなボランティアだとか、それぞれのコミュニティの中でみんなが力を出し合いながらやる自然エネルギーがありますが、両方やらないとダメなんです。やはり、地産地消型の協同組合型の電気だけで日本の産業を全部担うのはムリです。だから大企業もどんどんやらないとダメ。そうしないと、日本の自然エネルギーの絶対量は増えない。だから、ぼくは両方やらないとダメだよと言うんです。
両方共にいま、日本の「政策障害」に完全にブロックされていて、ひどい邪魔をされている。今日の山崎さんの話でもわかったと思うけど、日本の自然エネルギーの大発展を妨げているのは、理由はたった一つですよ。何かというと「政策障害」。政策、政府と電力会社の政策的なインチキ、ズル、妨害、これによって妨げられている。
それを取り戻せば、日本の自然エネルギーは来年倍になる、再来年4倍に、3年後には8倍になる。あっという間に自然エネルギー大国になれる。それを陰に陽に、ぼくらは闘っているわけです。水球みたいなもので、水の上はフェアプレーですが、水面下はこうやって《ガーンガンと(足で蹴るジェスチャー)》ね。それが現状。
日本の政策障害、自然エネルギーに対する政策による妨害をやめさせれば、絶対にあっという間に日本は自然エネルギー大国になる。そういうことを描いたのが、この映画なの。
-映画について 暗い『日本と原発』と明るい『日本と再生』-
ぼくがなぜ、この映画『日本と原発』を作ったかという話をしますね。
ぼくは、とにかく脱原発至上主義者ですから、脱原発のことを考えて裁判をずっとやっていた。だけど、裁判だけではなかなか国民に浸透しない、どうしたらいいかということで、4年半前に作ったのがこの『日本と原発』。これはヒットしたね、今でもヒットしているんです、すごくヒットしている。
ところで、この『日本と原発』という映画を見たことある人、手を上げてください。この映画、日本の原発の問題点を網羅的にかつ、徹底的に描いてあります。しかも、ただ羅列するのではなくて、これを見れば日本の原発の問題を鳥瞰図として上から全部見ることができて、自分がどこにいて何をすればいいかがわかる映画です。どんな原発推進論者との論争でも必ず勝てる、そういう最高の映画です。
自分で言うのもなんだけど、ぼくは自信があるからそう言う。それから、そう言って広めることが日本のためだと思うから、あえて言うんです。これを見ないで脱原発運動をするのは、地図なしで山に登ると同じ。必ず迷う。それから勇気がなくなる、あ、やっぱりダメだと、下山しちゃうとか、道に迷って雪に埋もれて死ぬか。だから、脱原発に少しでも関心がある人は必ず見てくださいよ、必ずですよ。見ないで脱原発を語らないでください。
『日本と原発』は、めちゃくちゃヒットして今までに1800回ぐらい日本中で自主上映されていて、見た人が12~13万人までいっている。映画を観た人は「よくわかった」「原発止めないとダメだよね」と言うんですよ。でも「替わりの電気はどうしたらいいの?」と、みんな異口同音に聞くわけですよ。それで、その質問には答えないといけないと思って作ったのが『日本と再生』で、これも大ヒット中。毎週土日は、上映会での監督挨拶のお座敷がかかって忙しい。それくらい、めちゃくちゃヒットしているんです。
『日本と原発』は、正直いって重いです、暗いの。だけど、しょうがない、暗いからと逃げていちゃ脱原発できないから取り組まないと。だけど、『日本と再生』、これは明るいの。なぜ明るいかというと、実際、世界は明るいから明るいんです。明るい世界をそのまま撮った。世界の自然エネルギーの状況をそのまま撮ったら、そりゃ自然エネルギーの状況は明るいから、映画も明るい。そしてみんな、「わかった!」となるわけです。
-世界的な自然エネルギーの潮流「自然エネルギーは儲かる」-
山崎さんが言っていたことはそのとおりなんだけど、結論的に言うと、いまから2年ちょっと前にパリ協定が成立して、そこで「脱CO2、脱温暖化の手段は自然エネルギー」という大きな潮流になったんです。部分的にではなく、潮流。すごい潮流になって世界中をガーっと回っているんです。なぜ、そういうことになったかというと、自然エネルギーの価格がめちゃくちゃ安くなっていて、それをやらないと損というところまできたから。
今までは京都議定書以来、なかなか脱CO2がうまくいかなかったんです。各国が協力できなかったから。なぜかというと、基本的な対立構造があった。先進国は後進国に対して「お前ら石油・石炭をそんなに燃やすのをやめろよ、空気が汚れてCO2が出て温暖化が進むじゃないか」と文句を言う。そうすると、後進国が「何を言っているんだ、お前ら散々使いたい放題して勝手なことをやって、俺たちがいざがんばろうと言ったら足を引っ張るのかよ」という基本的な対立構造が20数年、解けなかった。
ところが、パリ協定でそれが解けた。なぜかというと、それはいま言ったように、自然エネルギーで安くて安全なエネルギーが大量に採れるということを、後進国も先進国も理解したから。それならばいいや、と。それに加えて先進国も後進国に対して、何兆円というファンドをつくって、これをそのために使いなさいと言ったわけです。その上に金まで貸してくれるなら、そんなにいいことはないということで後進国は賛成した。
いままで、京都議定書までは中国とアメリカは反対した。彼らはいっぱい石炭・石油を使うから、それが足かせになるのはいやだから。だけど、パリ協定では賛成に回った。なぜかというと、中国とアメリカは自然エネルギー大国で大変にすぐれた技術と、大変にすぐれた自然エネルギーの製品をもっているから、それを後進国に売り込める。アメリカにも中国にとっても非常に儲かる。自国にとって国益になると判断したから、そこで米中が賛成にまわった。それでパリ協定が成立したんです。
「脱CO2・脱温暖化の手段は原発」なんていうのは、世界ではほとんど誰も言わないんですよ。陰の方でコソコソと言うことはあっても、大きな声で言うと「何を言っているんだ、バカ野郎!」とみんなから言われるから言わないわけ。だけど日本は「脱CO2決まりました、CO2出さない原発やりましょうね」なんて、パリ協定から帰ってから言うんです。これ内弁慶って言うんだけど、そんなかんじなんですよ。
だけど、世界は脱CO2・脱温暖化、その手段は自然エネルギーという大きな、大きな流れになっている。それが、いまから2年ちょっと前のパリ協定のときよりも、さらに状況は進んでいるんです。どうなったかというと、パリ協定では、自然エネルギーは環境にいい、脱CO2にいい、だからやりましょう、と。いまや、それも克服したというか、それも超えて、自然エネルギーはとにかく安くなって儲かるから自然エネルギーをやろうと。
自然エネルギーと環境問題が、ある意味では隔離された独立運動をはじめた。だから、アメリカなんかが、拝金主義のアメリカでさえも、自然エネルギーに本気なんですよ。それはなぜか、環境にいいからじゃないんです。本当に儲かるから。そういうふうになってきた。もちろんぼくらも「環境のため」ということも考えますよ、もちろんそれは大事にする。だけど、そこをさらに超えたところまで自然エネルギーの潮流は来た。
kWhあたり2.6円。さらに最近は2.0円ぐらいまできた。原発はkWhあたり11~12円以上ですよ。政府もさすがに11円とか10数円とかは言わないわけ。最低これぐらい、でもそれ以上はわかりません、と。これを青天井と言うんですがあたりまえですよ、福島原発事故にかかる費用がまだ全然わからないから。下手すると70兆円かかる。そういうことを含んでいるから、ここまでですと言えないぐらい、それぐらい原発は高いんです。圧倒的に自然エネルギーがどんどん安くなってきた。いま、そういう状況の中にある。
-「原自連」vs「電事連」-
それで、ぼくはここで『原発ゼロ・自然エネルギー推進法』を、国会の中に持ち込むチャンスが来たなと思ったわけです。小泉(純一郎)さんも、そう思ったわけです。
小泉さんとぼくと仲間たちは、ご存じのように「原自連」をつくりました。「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」、略して「原自連」。敵は「電事連」、ぼくらは「原自連」。「電事連」vs「原自連」という対立構造をつくった。
日本中の脱原発団体、自然エネルギー団体が、それぞれの持ち場でがんばっているんだけど、連合していないし団結してないんです。これではダメだと言うことで、世論としてこうなんだと言うときに、一つの団体が言うだけじゃダメなので、連合体をつくって闘う、なにかのときには団結して助け合う、そういう組織をつくらないとダメだと思って、去年4月につくったんです。
そして、小泉さんがいろいろなところで演説して、それがどんどんじわじわ効いてきて、世論がだんだんイイ方向にきた。その影響で小池(百合子)さんも「脱原発」を掲げた。だけど小池さんは、旗を上げて旗をすぐに降ろさせられてというか、ああいうことになったでしょ。その結果、何ができたかというと「立憲民主党」ができたわけです。
小池さんが脱原発をそのまま掲げて、しかも誰でも入れてあげるよとやれば、もしかしたら政権がひっくり返ったかもしれないけど、死んだ子の齢を数えてもしょうがない。あの騒動の利益は立憲民主党ができたことです。
-原自連「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」策定
立憲民主党など政党への呼びかけ-
いままで民主党や民進党はろくでもなかったんですよ。なぜかというと、あの中に電力総連出身の議員が何人かいたんですよ。彼らのミッションは脱原発の足を引っ張ること、原発推進に対するマイナス要素をとにかく全部ブロックすること、あいつらの仕事はそれしかないんだから。脱原発なんて言うと、連合が次の選挙を手伝わないよとやるわけです。そうすると、みんな手足を持っていない議員ばかりだから、連合から見放されると次の選挙をたたかえないとヘナヘナになる。こういう政党だったから、口ではいうものの、脱原発をきちんと打ち出せなかった。
それが、あの成り行きの中で枝野さんが立憲民主党をつくって、民進の脱原発派の議員はほとんどそっちに行った。電力総連とか連合のそういう議員は行き場所がなくなってしまった。いまや、最大野党で脱原発をズバッと言える政党ができたんです。時は来たれりです。だから、ぼくらは立憲民主党に法案をやろうよと言ったんです。立憲民主党も、もちろんそれは考えていましたよ、と。
希望の党にも結構いい人が行ったんです。田嶋要さんとか柿沢未途さんとか、なかなかがんばる人があっちにもいるんです。なので、そっちにも呼びかけて、とにかく野党がなるべく超党派で、しかも妥協的でないスパッとした脱原発、そして自然エネルギー推進法を作ろうといったら、立憲民主党はもちろん賛成。それから、もっといえば共産党もぼくらに賛成です。とにかくイイ方向にきた。
ここが大事なところですが、原発ゼロ、即ゼロ、再稼働全部ダメという法律を、ぼくら「原自連」は提案しているんです。実は、3年半前にぼくらは「脱原発基本法」というのを提案したんだけど、そのときには原発即時ゼロと言えなかったんです。なるべく多くの人を巻き込もうとしたから。即時はムリだから30年までになんとか、20年までになんとか、ということだったんです。
ところが、この7年間、実質上原発ゼロでやってこれたということが、国民の意識にじわっとしみ通っているんです。そうですよね、みなさん。実際にはいま、伊方原発と川内原発が動いているし、高浜原発も動いているけど、そんなもの屁みたいなものです。54基から比べたら。だから、いまは原発ゼロと同じ。
「原発ゼロで7年間やれたね」「原発は止めてもいいんだ、どうってことないね」というふうに国民が肌で感じはじめたし、ぼくらが「即時ゼロ」と言っても、「そんなの現実的ではないよ」と言えなくなったわけです。だから、ぼくらは「原発即時ゼロ」「再稼働全面禁止」という法律を提案しているんです。
しかし、立憲民主党の「原発ゼロ基本法案」では、緊急事態のときに限って動かせる、となってます。ぼくらは、そこはこれから話し合わないといけないと思っています。石油等がまったく輸入されなくなってなくなった場合など、そういう緊急時には再稼働可能と書いてあるんです。(*注:2月22日正式決定した法案では、この例外規定は削除されました。https://cdp-japan.jp/news/1531)
そんなことあるの?と。石油は備蓄だってあるわけだし。LNGだってあるし、いろいろあるし。自然エネルギーだって、もう15~20%までいくし、いざとなればもっといくんだから。原発なんか動かさないといけない緊急時なんて、石油がぜんぶなくなって、燃料が全部なくなって電気が一切つくれなくなる状況なんて、自然エネルギーがそれまでに発達しているし、ないんですよ。
緊急時に動かすためにはどうしなければいけないかというと、原発を何基か置いておかないといけないわけです。原発は止めといていきなりスイッチ入れたら動くというものではありません。いつも冷却材もなにも循環させて、そしてポンと押せば動くようにしておかなければいけないということは、稼働はしてなくても原発がそこにあるということなんですよ。だから、本当にありもしない緊急事態に備えるために、そういうものを何基か日本に置いておくリスクの方がよほど高いよという話をね、山崎さん、これからしましょうね。
それ以外は、ぼくらは自然エネルギーを2030年までに40%、50年までに100%という具体的な数字をあげています。そこが、少し立憲民主党と違うところだけど、立憲民主党もぼくらに言われて、たぶん具体的な数字をあげるようになると思います。
-広島高裁の伊方原発差し止めの決定について-
今日のぼくのテーマは、広島高裁の伊方原発差し止めの決定について話せとあったんだけど、時間がもうなくなりましたのでこれで終わりにします、というのはうそです。(笑)
まず、判決の中身からいうと、争点は10点あったんです。勝ったのは、たった1点、火山だけ。ほかの9点ではぜんぶ負けているんです。どういう争点かというと、「基準地震動策定の合理性」「耐震設計における重要度分類の合理性」「使用済燃料ピット等に係わる安全性」「地すべりと液状化現象による危険性」「制御棒挿入に係る危険性」「基準津波策定の合理性」「シビアアクシデント対策の合理性」「テロ対策の合理性」、これらが全部負けているんですよ。こっちの言い分を全部ハネているんです。
で、たった1点、「火山事象の影響による危険性」というのだけ勝たせてくれたんです。だから、ある非常に厳しいわれわれの仲間の弁護士は「なんだ、これでは負けたも同じじゃないか」と言ったんですよね。でもぼくは「違うよ、それは」と。「そんなこと世間に向かって言っちゃダメだよ、俺たちは勝ったんだよ」と言いました。
実際ですね、火山でどういう理由で勝ったかというと、カルデラ式のでかい火山噴火があると、火砕流がブワーッと150kmぐらい出るんです。火砕流とは何かというと、皆さんがよく誤解するのは、溶岩がドロドロドロと山肌を伝って落ちてくるのは、あれは溶岩流(マグマが火口から流れ出したもの)で火砕流ではないんです。火砕流というのは、熱とガスと砂と、かなり大きな石、そういうものを含んだものがすごい勢いでまわりに噴き出るんです。
火砕流がかかったところは原発もなにも、全部ダメになって、そこにいる人も全部死んじゃう、カルデラ噴火とはそういうものなんです。そういうことがかつてなかった場所にだけ原発をつくっていいという、そういう規制基準になっているんです。
四国電力は、「阿蘇の噴火のときに伊方原発には火砕流は来ませんでしたよ」と立証しなさいと裁判で言われて、それができなかったんです。だから、立証できなかったということは、来たかも知れないでしょ、と。「そういうところは立地不適なんですよ」という理由だけで勝たせてくれたんです。
ほとんどの世間の人は、「火山?10万年?160km?、そんなことまで心配するのかよ」と言ったきたわけです。しかし「そういうふうに思うかも知れないけど、でも、規則に書いてあるからしょうがないよね」と裁判所が書いたんです。おもしろいでしょ、ちゃんと逃げているんです。それだけで、勝ったんです。
裁判所は、あとの9点ではぼくらの主張を全部ハネているんです。たとえば、伊方原発の目の前を走っている、400数十kmもある中央構造線。これがズレたらどうするのか。四国電力はどう言ったかというと、そんなに長いからといって地震が大きくなるわけではなくて、活断層の長さが一定の長さを超えたら飽和状態になって、それ以上は大きくならないというようなことを言ったんです。「飽和説」というのですが。
それを裁判所はやすやすと認めて、ほかの点でもぼくらをどんどん負かせて、最後に火山だけで勝たせた。悲観的にみればぼくたちは1対9で負けたということになるけど、それは違うんです。裁判では、判決を読むときに判決の結論と結びつく理由だけが判決理由なんです。判決の主文と結びつく、それを導き出すための理由だけが判決理由で、そのほかのことは傍論、傍らの論で法的にはほとんど意味がないとされているんです。
だから、この決定の判決理由は火山のことだけ。そのほか、ぼくらがあーでもない、こーでもないと、負かされたというのは傍論で意味なし、というふうに解釈するのが決定の正しい理解。だから、ぼくは「勝ったー!」と、このピンクのジャケットを着てやったわけです。あれは、うそでも何でもなくて、その他いろいろあーでもない、こーでもないとごちゃごちゃ言っているのは、傍ら論なので関係ない。
-原発の闘いは厳しいが最重要な社会問題だ-
こういうふうにして勝ったんですが、相手(四国電力)は異議申立をして、これから異議審というのがはじまります。これから熾烈な闘いがはじまります。原発の裁判は厳しい闘いなんです。敵と文字通り白刃で切り結ぶような、そういう肉弾戦です。目の前に敵がいるんだから。そして、絶対にスキを見せられない、背中も見せられない、相手が何か言ったら、その場で反論する、変なことを言ったら抑え込む。それも、横目で裁判長を見ながら、裁判官はこれについてどんな判断をするかと考えなら、反論する攻撃する、受ける、こういう闘いを毎日、毎日ぼくらはやっています。これは厳しいですよ。
原発の闘いは、そういう意味ですごく厳しいし、ほかの社会問題のボランティアや市民運動と違う厳しさがあるんです。なぜならば、原発と闘うということは、原子力村と闘うということだからです。原子力村というのは、日本の政治・経済・文化・教育すべての6~7割を押さえていて、それに遠慮や忖度する人や団体、会社を入れると9割ぐらい日本を抑え込んでいるんですよ。原発と闘うということは、それと闘うことなんです。だから厳しいんです。
例えば、ぼくは中国残留孤児の国籍を取る支援運動をやっていますが、まわりの人が「河合さんはいいことをやっているね、ぼくらもやらないといけないのに。ありがとう、がんばってね」と言ってくれるんですよ。だから慰めになるんです。日本国籍を取ってあげると、中国残留孤児も感謝してくれます。
だけど、ひとたびそれが脱原発の闘いになった途端、憎悪と敵意に囲まれるんです。ぼくなんか憎悪と敵意に囲まれて、皆さんと会うのが慰めみたいなもんです。(笑)
社会構造的にそうなっているわけです。中国残留孤児の問題で闘うときには、「権力の一部」と闘うんです。厚労省が棄民政策をとること対して、それはおかしいじゃないかと厚労省と闘うんです。だけど原発と闘うということは、日本の権力構造全部、そして社会構造全部と闘うという、そういう厳しさがあるんです。
社会問題の中で一番重要なのが、原発の問題なんです。だって、原発がもう一回事故を起こしたら、すべての問題が吹っ飛ぶんですよ。たとえば格差是正、貧困から人を救わないといけないんですよ。だけど、放射能が飛んできたら金持ちも貧乏人もないからね、全員逃げないといけない。教育、いじめ、受験戦争も、それどころではなくなる。いじめるやつもいじめられるやつも、一緒に放射能から逃げないといけない。浪江町なんかたった6校の生徒が700校に分散している。教育が存在しなくなるわけです。福祉も介護もそうです。
すべての社会問題は、原発の重大事故の前には無力に吹っ飛ぶんです。それぞれ皆さんが、文化や教育などいろいろなことに取り組んでいるのはすごく大事なんですが、だけど、原発がもう一回過酷事故を起こせば、それらが全部ぶっ飛ぶ。逆に言うと、すべてのいろいろな活動をしている人たちも、原発のことは常に頭に入れて、「原発はやめようね」ということを考えておいてほしいし、それに対してある程度時間もつかってほしい。
ここに、いろいろな問題がある。これが、原発事故が起こるとちゃぶ台返しになるんです、バーンと。このちゃぶ台返しをさせないことが、脱原発運動なんです。
ぼくたちは、日本で一番重要な問題に取り組んでいるんです。これは誇りを持つべきことです。絶対に自信をもって!みなさん、この一番大事なことに正面から、これからも一緒に取り組みましょう。
(2018年1月16日:Asagaya/Loft Aにて)
河合弘之 <プロフィール>
1968年東京大学法学部卒業。1970年弁護士登録。さくら共同法律事務所所長。ダグラス・グラマン事件を皮切りに、平和相互銀行事件、忠実屋・いなげや事件、イトマン事件など多くの経済事件に手腕を振るう傍ら、中国残留孤児の国籍取得、フィリピン残留二世戸籍取得に尽力。伊方原発差止め仮処分弁護団長、浜岡原発差止訴訟弁護団長、大間原発差止訴訟弁護団共同代表ほか。脱原発弁護団全国連絡会共同代表、3・11甲状腺がん子ども基金理事。著書に『原発訴訟が社会を変える』、関連書籍に『逆襲弁護士 河合弘之』(大下英治著)。2014年より映画監督として「日本と原発 私たちは原発で幸せですか?」発表。最新作「日本と再生 光と風のギガワット作戦」。