NO NUKES PRESS web Vol.013(2019/01/24)

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NO NUKES PRESS web Vol.013(2019/01/24)
NO NUKES! human chains vol.06:後藤正文さん ロングインタビュー (聞き手:Misao Redwolf)
 
福島原発事故発生からもうすぐ8年ですが、原発事故はいまも続いています。事故収束もままならず放射能の放出が続き、避難生活者も5万人と言われています(2018年3月現在)。圧倒的脱原発世論を無視し、愚かな現政権は原発を推進していますが、原発に反対しエネルギー政策の転換を求める人々の輪は拡がり続けています。【NO NUKES! human chains】では、ゲストの皆さんへのインタビューを通じ、様々な思いを共有していきます。
 
【NO NUKES! human chains】では、ゲストのかたに次のゲストをご紹介いただきます。Vol.06では島昭宏さんからご紹介いただいた、ミュージシャンの後藤正文さん(ASIAN KUNG-FU GENERATION)のロングインタビューをお届けします。
古賀茂明さん吉原毅さん落合恵子さんドリアン助川さん島昭宏さん後藤正文さん


【NO NUKES PRESS web Vol.013(2019/01/24)】NO NUKES! human chains vol.06:後藤正文さん @gotch_akg ロングインタビュー(聞き手:Misao Redwolf) http://coalitionagainstnukes.jp/?p=11841 pic.twitter.com/gUz3tIow76

 
 

―『六ヶ所村ラプソディー』―
 
Misao:最初に、後藤さんが原発の問題に気づいた経緯をうかがいたいと思います。
 
後藤:鎌仲ひとみさんの映画『六ヶ所村ラプソディー』を観たのが大きなきっかけでしたね。もともとは大学生のときに、授業で核燃料サイクルや再処理の話を取り上げたことがあったんですよ。テストの題材にもなったからよく覚えていているんですが、うまくいけば放射性廃棄物がなくなるし、実用化されたら夢のような話だと思いました。
 
Misao:大学の授業では、核燃料サイクルを肯定的に取り上げていたのですか?
 
後藤:そうですね。授業ではそんな感じだったので、面白いな、なるほどなと思っていたんだけど、映画を観ると違うわけですよね。まず、再処理工場はものすごいところにあるんだなと思って、実際に六ヶ所村に行ってみました。ライブツアーで青森に行ったときに、1日オフがあったので車で行ってみたんです。
 
Misao:六ヶ所再処理工場は、かなり交通の不便なところにありますよね。
 
後藤:めちゃくちゃ遠かった。当時、『実際に行ってみるシリーズ』みたいなことをやっていて、辺野古にも行きました。沖縄では辺野古だけではなく、基地めぐりもしました。どんなところに何があるのかを知りたくて、自分で車を運転して行ってみたんです。山口県の上関原発の建設予定地にも行きましたが、やはり遠いんですよね。地図を見たらそんなに遠くないと思ったんですが、新幹線の駅でレンタカーを借りて運転していったら、遠い。
 
Misao:実際に六ヶ所村の再処理工場まで行ってみて、どんな実感をもたれましたか?
 
後藤:まず、やはり遠いというのが一つですよね。ものすごいところにつくったな、みたいなね。だけど、六ヶ所村に入ると道は広くなるわ、ショッピングセンターみたいなものがあるわで、明らかにお金が落ちている感じというか、街のインフラが整ってることに驚いて、なんだろうなこれはと思いましたね。
 
そのときは、自分自身の生活で日々使う電気をつくるために生まれたもの、不要なもの、迷惑なものたちがどこに行くのか、どういう人たちに押しつけられているのか、ということに興味があったんです。自分の家の近所にあったら困るようなものが、一体どういう距離感のところにあるのかということを考えていたので、東京からも青森市からもこんなに離れたところにあるという、その距離感を体で感じたことは、自分にとっては大きなことでした。
 
六ケ所原燃PRセンターでは、「安全です、どんなことがあっても放射能は漏れません」と説明をされました。当時、ブログにも書いたんだけど、どれだけ安全かを強く語られれば語られるほど、中に入っているものはかなりマズイということを逆説的に現わしている。絶対に漏れませんと言っているということは、絶対に漏れてはいけないものが入っているということ。恐ろしいことだよね。近寄ったら即死するようなものをガラス固化体にして処理するというけど、失敗続きで計画はぜんぜん進んでいないし。
 
原発や再処理工場のことを調べていくうちに、上関の情報が目に入ってきたんですが、そういえば地元にも原発があるな、と関心を持ったんです。ぼくの地元は浜岡原発から20kmくらいなんですが、それまで、そのことをあまり考えてはきませんでした。ちょうど原発建設反対運動が盛り上がってきた上関に行ってみたら、本当にものすごいところにつくるんだなと思いましたね。農道みたいなところを行ききって、反対派が切り開いた山道を歩いてやっと海岸に出て、そこを埋立てようとしているんです。
 
 
―表現者としての責任―
 
Misao:ちょうど、中国電力の埋立て強行に対して、反対派やカヤック隊の人たちが体を張って激しい抵抗をしていたピーク時の直後に東日本大震災が発生し、福島原発事故が起こったんですよね。後藤さんは事故より前に原発について問題意識を持っていたのですが、実際に事故が起こったときにはどう思ったのでしょうか?
 
後藤:上関に行って、「ほんとうにマズイものがあって、ぼくたちはこういうものをいろいろな場所に押しつけているんだ」「ミュージシャンがこういうことを書くのはどうかと思うかもしれないけど、でも人ごとじゃないんだ」という趣旨のブログを書いたんです。「何かほんとうにすごいことが起きないとぼくたちは気づかないから、考えていくべきだ」と書いたんですね(http://k.asiankung-fu.com/s/n2/diary/detail/64692?ima=5326&cd=akg_gotch)。上関に行ったのが3月11日の3日ぐらい前で、ブログを書いたあとすぐに地震があったので、ハッと驚きました。
 
Misao:ブログの日記が原発事故の予言というか、予見のようなことになったんですね。
 
後藤:そうですね。でも、3.11当日には原発がどうにかなっているとはまだ思ってなくて、次の日ぐらいから考えました。電源喪失のニュースを見たときはマズイと思いましたね。漏れてはいけない、どんなに怖いものが原発の中に入っているかは調べてわかっていたので、ちょっと青ざめました。もう祈るしかないけど、「これはマズイよ。静岡の実家に泊まってもいいよ」と友達やメンバーに連絡をしました。仕事はぜんぶ流れて何もなくなっていたので、一旦静岡に行って様子を見ました。
 
それからすぐ、3月19日頃には横浜に戻りました。責任だと思ってね。首都圏に戻って、そこで暮らす人たちと一緒に戸惑うべきなのではないかと思ったんです。戻ってきて、そこでちゃんといま起きていることを感じようと思って。ただ、3月20~21日頃に雨が降ったとき、たぶん、ぼくはそこで被ばくしているんですが、放射性物質が東京に来ているとは思っていなかったですね。うちの親父は「放射能は静岡まで飛んで来ているよ、当たり前だよ」と謎の断言をしていたんですが。
 
Misao:3月15~16日頃に、東京に最初の大きな放射能プルームが来たんですよね。私は前日に名古屋に避難していたので逃れることができました。事情があり、しぶしぶ3月末に東京に戻ったんですが、新幹線から降りたとたん、ある感覚が起こりパシっとスイッチが切り替わって、原発をなくすことに自分を捧げよう、ここで骨を埋めようと、責任の念が湧いてきました。後藤さんも自分の責任として首都圏に戻られたわけですが、それからどのように過ごされたのですか?
 
後藤:ライブを始めるなど、普通に音楽活動をしていましたね。友達と被災地に義援金を送る取り組みを始めましたが、そのぐらいかな、まずは。怒りより戸惑いの方が大きかったので。自分だけ、どこか安全な場所にいるのは違うと思っていましたね。原発に対してもまったく無責任ではないと思ったし。ぼくたちが使わないとスタジオなどがつぶれるという状況もあったので、スタジオに入ってアルバムをつくりました。
 
とにかく、時代のフィーリングというか、そこに居る人たちと一緒に悲しんだりしなければいけないと思っていました。それが、いまを生きる表現者としての責任だろうと考えたんです。震災と原発事故の影響を、いままで暮らしてきた環境の中で、ちゃんと感じないといけないと思ったんです。いろいろやっているうちに、もっと強く発信してこなかったことへの後悔が自分の中で出てきました。ブログにもいろいろ書いていますが、震災当時のことは『何度でもオールライトと歌え』という本に書いています。
 
 

―『THE FUTURE TIMES』―
 
後藤:横浜に戻ってきてから、何かやらないといけないなという気持ちがどんどん高まっていきました。それで、新聞をつくろうと思いついたんですね。というのは、各地で脱原発のデモが始まったんですが、当時のぼくは、デモ行進というのは本当に意味があるの? という一派のひとりだったから、デモに何か効果があるのか疑問だったんですね。だいたい、霞ヶ関とかで見かけるデモはむなしい行進というかね。
 
Misao:組織の動員型で人通りの少ない霞ヶ関とかでやるデモですね。
 
後藤:みんなバスで来て行進して帰るみたいなのが、どうなんだろうと思っていたんだけど、そういう人たちに対して文句を言っているだけというのもね。何か違うデモンストレーションのやり方もあっていいのではないかなと考えました。「反対!」みたいな言い方ではなくて、太陽光エネルギーとか再生可能エネルギーとか、ほかにもいいものあるぜ、というような新聞。おれも勉強しながら一緒に学びながら新しい方にいけるかな、という気持ちで『THE FUTURE TIMES』(
http://www.thefuturetimes.jp/
)をつくり始めました。
 
それで、デモにも行かないといけないなと思ったんです。気持ちのやり場がないから、怒りに行きたいと思ったしね。それで、官邸前抗議に参加したりTwitNoNukesの取材をさせてもらったりして、デモは必要だしやった方がいいと思うようになりました。当たり前にデモをやればいいんだ、いままでやってこなさすぎたんだな、と。もっと普通の人が普通にデモで街を歩いた方がいいし、為政者にとって官邸前や国会前の抗議はやはり怖いしね。実際に来られた方がイヤだろうなと思って。
 
Misao:そうなんですよね。もちろん署名も意義はあるのですが、紙束を積まれるより、文句を言いに多くの人に実際に来られる方が、心理的に実感が湧きますからね。それが官邸前で抗議をすることの、一つの意義と思ってやっているんです。
 
後藤:来ないと収まらないほど怒っているやつがいるということは、自分だったらやはり、怖いですよ。
 
Misao:繁華街でのデモ行進はまた違う位置づけなんですが、官邸だけでなく省庁の前などでのスタンディングの抗議も、そういう意味合いがありますよね。中の人も気にすると思います、集まられると。
 
後藤:わかります。世論の反映かなと思いますよね。
 
Misao:その絵がテレビや新聞で報道されれば、この政策は不評を買っているんだということが可視化され、世間に伝わるという利点もあります。ただ、新聞『THE FUTURE TIMES』のようなアプローチの方が、日本の人たちには受け入れられやすいような気もするんですよね。
 
後藤:いろいろな場所でいろいろな人が、いろいろなやり方で問題を訴えていけばいいと思う。そこで問題が起こったり、たとえば反論があれば話し合いをすればいいし。それをスルーして何かが決まっていくのではなくて、ちょっと一歩発ち止まって、もっといいやり方があるのではないかとか、そういうことも含めて話し合う。これは何の問題でもそう。政治にしても、そういう合意形成の場がなかったわけですよね。選挙制度とかも含めて、一方的にやれるようになっていることが、問題だと思うんですよ。
 
Misao:安倍政権になってから、特にそうですよね。震災当時の民主党政権は、デモや国民世論を汲み上げて「2030年原発ゼロ」を決定しました。私たちも与党議員とテーブルを囲み、公開で話をしたり、官邸で首相と面談したりと、安倍政権に比べると民主主義的だったなと思います。いまの政権は、国民どころか野党との対話にも応じないので。
 
後藤:野田政権の投げ出し方が最悪だったから、自民党だけが悪いわけじゃない気もしますけどね。その後は投票率もよくなくて、最低を更新したりして、本当にみんな白けちゃっている。これはすごく問題だとは思うんだけど、こういうことは自分たちの社会のこれまでの答え合わせでもあるからね。あれは、実は、長いスパンで起きたことの「答え」なんだよね。
 
一方で、よくしようと活動することは意味がないわけじゃない。今すぐに結果が出なくても、20年後とかに「答え」になってくると思うから、緩めないでやった方がいい。いま起きている不具合は、別にぼくたちが震災以降にサボったから出たわけじゃなくて、もっと長いスパンで起きたことの答え合わせだから。タフだけど、やめてはいけない。自分もじいさんになるまでちゃんと胸張って、やらないといけないなと思っています。
 
 

―しぶとい構造―
 
Misao:もっと言えば、第2次世界大戦後のGHQだったり、明治新政府以来のことなど100年単位のタイムスパンでの積み上げも、現代社会に大きな影響を与えていると思います。後藤さんは長い先を見据えて『THE FUTURE TIMES』に取り組んでおられますが、これまでやってきて、心に残っていることはありますか?
 
後藤:南相馬に行ったとき、話しかけられたおじいさんに『THE FUTURE TIMES』を読んでいると言われたときはうれしかった。孫がうちに忘れていったので、読んでみたら面白かったと言ってもらえましたね。
 
Misao:『THE FUTURE TIMES』では、後藤さんが取材をされています。これ一つといったら難しいと思いますが、一番印象に残った取材は何でしょうか? やはり、被災地ですか?
 
後藤:一番を決めるのは難しいんですが、被災地の問題というのは、自分たちが生きている社会の産業のあり方を現わしている気がしました。2011年の創刊号で、岩手県気仙沼の林業のまち住田町の取材をしたんですが(
http://www.thefuturetimes.jp/archive/no01/life311_01/
)、震災が起きてすぐに町長が決断して、仮設住宅を自分たちの町の木でつくったんです。県の指示を待っていては遅いから、どんどん進めたんですが、それが狭いけどいい家なんですよ。
 
その後、プレハブの仮設住宅がガンガンできてきたんですね。建てるスピード感も必要なんだけど、寒くなってから断熱したり、防音の問題だったり、いろんなことが後手後手で、ただ住むところがあればいいわけじゃないんだなって思いましたね。公共事業が悪いとはいわないけど、システマチックに、いままで儲かっていた人たちが金を回収していく感じがイヤだと思ったし、すごく違和感がありましたね。
 
一方で、何か新しいことをしようとしている人たちがいて、自分たちの町の木を使って、太陽光温水器や太陽光発電を設置した温かい家をつくっている。そういうコントラストを見ると、自分はどちらがいいと思うかは、問うまでもないというか。やはり、変わっていかなければいけないんじゃないかと思いますね。かと思えば、今度は海沿いをコンクリートでガンガン固め始めたでしょう。これはなんなんだ、と。
 
Misao:私も福島の友人から聞いたんですが、あのコンクリートの防波堤は不評なんだそうです。海が見えなくなって悲しいとか、海の様子が見えないからむしろ怖い、とか。
 
後藤:どこにお金が行くのかという問題もありますね。コンクリートの保全管理をしていくのに毎年何億という維持費がかかると思いますが、どこにそのお金が流れるのか。もっとほかに使うところはないのか。「コンクリートから人へ」と言っていたのが逆戻りして、日本中の海も山もコンクリートで固めていく流れというか、コンクリートで全部埋めるまでやるのかなとか考えると、ちょっとショックですね。除染作業にしても、外国人労働者をひどい給料で雇ったり、中間搾取している人たちがいたり、人権も何もあったもんじゃない。なかなかしぶとい構造だと思いますね。
 
Misao:そういった既存のシステムと、そのシステムの外での人々の動きが乖離してきていて、おっしゃったように以前よりコントラストがはっきり見えてきていると感じます。少しは進んできてはいるのかなとは思うのですが。
 
後藤:でも、そうやって構造の中で利益を得ている人たちが選挙に行って、自分たちに利益をもたらしてくれる人たちを選んでいるわけだからね。なかなかタフですよ、これは。みんながそれに気づいていかないと。
 
Misao:そうですね、気づかないから投票率も低いままだし、投票権を無駄にしていてもったいないです。投票率が上がれば選挙の結果も変わってくるはずですが、上げるのは難しい。権利や人権などの意識を身につけるためには、学校でも教えないといけないのではと思います。もし教育の改善ができても、短期間でなんとかなる問題でもないですが。
 
後藤:それはありますね。
 
 
―言葉の悪い使い方―
 
Misao:後藤さんはツイッターをやられていますよね。原発や憲法などについての意見をツイートすると、ミュージシャンが政治的な発言をすることについての批判などが散見されます。そういったことについてはどう考えていますか? まず、批判を受けた時にどう思いますか?
 
後藤:特に、意に介してないですね。社会の一員だから、社会について考えたり、それについて発言したりする責任はあると思っているので。それに関してはまったく何の疑いもない。これは当然のことだから。むしろ何も言っていない人の方が、もちろん言う言わないは個人の選択なんだけど、なんらかの作為があるんじゃないのと思ったりはしますね。こうして話したり書いたりすることは、必要なことだと思います。だけど、何か一つの方向に誰かを導きたいとかではないんです。ぼく自身も、考えている、勉強しようという態度だから。
 
何にしても、もっとオープンに話し合いが行われるような社会であってほしいと思います。ぼくは政治的なことを言っているのではなくて、社会的な、ソサエティーについて発言をしているんだけど、批判してくる人たちは、「政治」という言葉を悪く利用していると思う。わからないことは「政治」と呼んでしまえばいいという感じで。本当はそうではなくて、みんな社会の一員だから関係あるのに、「政治」と呼んで自分は関係ないというような使い方をするんだよね。
 
これは言葉の悪い使い方だと思う。「政治」と言えばバチッと自分と切り離せると思っている。結構アジア人ぽい考え方のような気がするよね。中国の人たちもそうだと思う。商売がやはり中心にあるんじゃないかと思う。中国に対する郷土愛はあるとは思うけど、中国のビジネスマンは共産党とぶつからなければいいわけで、愛国心みたいなのは薄いんじゃないかと想像します。そういうところは日本も大して変わらないと思いますね。むしろ、上手に政治を利用するのは、そういった企業の方だったりするしね。
 
国会議員は代議士だから、ぼくらの代わりに議論して政治を行っているわけですよね。だから、意見は吸い上げてもらわないといけないし、政治家たちはもっと市民と話してほしいと思います。たぶん、永田町や霞ヶ関の人たちは貧困の問題とかもぜんぜんわかっていないと思う。気にも留めていない。彼らは貧困から距離が遠いところにいる。それは、ぼくもそうかもしれないけど、ルポなんて山ほど出ているし、統計も出ているから、想像することはできますよね。
 
Misao:立憲民主党や共産党などの野党は、貧困問題について当事者や専門家からヒアリングするなどして調査をしていますが、貧困のリアルな実態はなかなか把握できないこともあるかと思います。
 
後藤:実態をつかむというのは難しい問題でありますけどね。でも、統計の数字やさまざまなルポなどを読んでいる限りでは、良い状態ではないんだろうなということはわかりますよね。知り合いの知り合いぐらいまでたどれば、『子ども食堂』をやっている人がいるじゃないですか。パンク界隈でもそういう人たちがいるしね。難しい問題なんだけど、身近な問題でもあるんです。
 
 

―あまり心配していない―
 
Misao:社会のありかたについて無関心な人も多く、投票率の低い日本のいまこの地点から見て、未来についてどう考えていますか? 後藤さんの歌を聞くと、いまの矛盾を表現しながらも、基本的にポジティブだなと思ったんです。何か前を向いているというか。
 
後藤:悲観的なことを言うのは簡単だと思います。絶望感みたいなことを言葉にするのはそんなに難しいことじゃない。でも、それは表現として高度だとは思わない。怒りだったり戸惑いだったり負の感情というのは自分の中にもあるけど、自分のエネルギーをひっくり返して、なるべくポジティブに使いたいというのはありますよね。そういう気持ちがすごくあります。
 
Misao:そういう意識があるから、前を向いているんだなという印象を、歌詞とか声とか音全体から受けたんですね。
 
後藤:ロックンロールはそういう音楽だと思いますよ。なんというか、空元気というか、大丈夫だ、大丈夫なんとかなるよ、ということを繰り返す。
 
Misao:そうは言っても内心では、この先の社会はこのままだとこうなっていきそうだなとか、どう感じていますか?
 
後藤:ぼくはあまり心配していないんです。ぼくらがちゃんとこうやって気を張って、草の根的にあきらめずにいれば、すごく若い、SEALDsのもっとすごいやつが出てくると思うんですよ。ジェレミー・コービンみたいな人も出てくるはず。だけど、そいつにだけすがっちゃいけないとは思うね。ぼくたちも一緒に隣に立っていないと。でも、出る杭は叩こうという文化なわけじゃないですか、日本は。そういうところは変わっていかないといけない。まったく同じことが繰り返されるだけだから。
 
すばらしい人が出てきたら、芽を摘もうという力が働くよね。そうではなく、傑出した人が活躍してくれれば、自分たちの社会、ひいては国ということで考えても得られる利益は莫大なわけだから、むしろ、みんなでちゃんと背中を押すぐらいの社会でないと、国の力がどんどん弱まっていくと思います。芽を摘むのはよくないよね。個人的な変な嫉妬心みたいなもので摘んじゃいけない。
 
Misao:社会運動では、そういうことは非常に多いです。いわゆる、ヘゲモニー的なライバル心などですよね。
 
後藤:おれの言うことを聞け、みたいなね。そうじゃないんだよね。別に自分の意見が通っているかどうかじゃなくて、みんなが幸せになっていくかどうかが大事なんだから。
 
Misao:私たちも、特に官邸前抗議のピーク時には、一部の左翼からひどく攻撃され、この人たちも原発をなくしたいと思っているなら見ているところが違うよね、と憤りを感じました。そういった悪しき環境が改善され、新しい人たちが出てきて、きっと新しい方へ変わっていくだろうというお考えなんですね。
 
後藤:変えていかなければいけないないし、もっと、有能な人たちが政治家になってほしいと思いますね。
 
Misao:あと、若い有能な人たちが出てくることにもリンクしますが、世代交代にも期待できるかなと思います。有害なご高齢の政治家が内閣にもいますけど、世代交代することによって、流れが変わる可能性もあると思います。
 
後藤:でも、近年、新しく政治家になった人たちの質が、軒並み低く見えますよね。もちろん立派な方もいると思いますが、小泉チルドレンの頃から、極端な人がときどき現れているように感じます。杉田水脈さんもそうだけど、ああいう問題発言があったときには、ちゃんと真顔で押し返していかないといけない。SEALDsの彼らに政治を志してほしいと思うけど、彼らだけに頼るのではなくてみんなでやっていかないとね。あの国会でのスピーチはすばらしかったしね。ぼくだったら緊張してできないと思う。
 
 
―体で感じる―
 
Misao:最後に、音楽もプライベートも含めて自分の人生で、後藤さんが大事にしていることはなんでしょうか?
 
後藤:頭だけじゃなくて、ちゃんと体を使って見ることは大事だと思います。六ヶ所や上関や浜岡に行ったり、辺野古に行ったりしたことで見えてきたことがたくさんあったんです。全員にそういうところに行けというわけじゃないけど、自分の町のゴミ処理場がどこにあるのか、ゴミがどこに埋立てられているか調べるのでもいいと思うんです。一体、それはどんな場所でどこにあって、自分の家からどういう距離感なのか。自分たちの便利のために、何がどこに押しつけられているのかを知ることが大事なんです。
 
それって、もっといえばバックヤードなんだけど、自分の庭先にあったらイヤなものはあるわけですよね。いまや小学校や幼稚園、保育園ですらそうやって扱われるときがあります。電力についても、原発が自分の家の隣に建てられるのはイヤだけど、ソーラーパネルを自分の家の屋根に設置するのがイヤだという人は少ないと思うんだよね。そう考えてみれば、自ずと、どちらがいいかがわかるよね。それは、自分の体の居心地のよさにもすごく通じているわけなんですが。
 
デモもそうだけど、画面越しに見ているのではなくて、そこにボディがあって、自分の体で感じるということはすごく大事だと思います。とはいえ、体は一つしかないし、事情があって行けないときには何を使うのか。そのために想像力があるんだと思います。行けなかったら考えてみる。そうしていけば、いい選択が増えていくんじゃないかなという気がしますね。原発は便利だし動かせばいいじゃん、と言うのは簡単。でも、そのまわりには誰が住んでいて、どういう町で何を引き受けているかとか、そういうことまで考えることは大事だと思います。
 
Misao:後藤さんのおっしゃっていることは、本当はすごくシンプルなことなんですよね。
 
後藤:めちゃくちゃシンプルです。行けなかったら、想像する。すごく大事だよね。妄想ではなくて想像すること。漢字では一文字しか違わないけど、妄想と想像はぜんぜん違うものだから。何が正しくて何が正しくないか、情報を判断するのはすごく難しいところではあるけど、なるべく多くの角度から物事を考えて、思い描いてみるということはすごく大事なことだと思います。
 
 
(2018年11月14日:東京都千代田区にて)
 
 
後藤正文 <プロフィール>
ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル&ギターであり、ほとんどの楽曲の作詞・作曲を手がける。
2018年12月、キューンミュージック(ソニー)から9作目となるオリジナル・アルバム『ホームタウン』を発表。2019年3月から全国35公演となるアルバムツアーも開催。
2010年、レーベル「only in dreams」を発足させ、webサイトも同時に開設。また、新しい時代やこれからの社会など私たちの未来を考える新聞『THE FUTURE TIMES』を編集長として発行するなど、 音楽はもちろんブログやTwitterでの社会とコミットした言動でも注目されている。
ソロアルバムに『Can’t Be Forever Young』やプロデューサーに元Death Cab for CutieのChris Wallaを迎えバンド録音を行った2ndアルバム『Good New Times』を発表。また著書に『凍った脳みそ』『銀河鉄道の星』『何度でもオールライトと歌え』(ミシマ社)、『YOROZU~妄想の民俗史~』(ロッキング・オン)他。
 
http://www.asiankung-fu.com
http://gotch.info
http://www.onlyindreams.com/artist/gotch.html
http://www.thefuturetimes.jp/

 


<予告>NO NUKES! human chains vol.07
このインタビュー・シリーズでは、ゲストのかたに次のゲストをご紹介いただきます。後藤正文さんからは、ミュージシャンの細美武士さん(the HIATUS/MONOEYES/ELLEGARDEN)をご紹介いただきました。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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